|
今回のコンフェレンスでのセミナーや競技会は、ビデオ撮影はもとより 写真撮影も一切禁止でしたので、文と写真が合わない事があります。あしからず・・・。 |
5月15日 いよいよセミナー最終日。 天使が空から降りて来た! この日最初の講師は昨日クリッカートレーニングを教えてくれた、GaryによるTARGETの講習だった。 これは一つの目印にタッチさせるタッチ&ターゲットのやり方及び応用。 講師が説明を始めてから数分、疲れもピークに達していた私は、興味を持っていたセミナーにも関わらず、 イングリッシュシャワーで頭の中は混乱状態、もうろうとしていた。 「ただ眠たかっただけだろう?(陰の声)」 「実はそうなんです」 通訳してくれる人も無く、夢の世界へ引き込まれそうになっていた所へ、 飛行機に乗ってるはずの里子さんがニコニコしながら現れた。 参加者限定で行われているコンファレンスでは、殆どの方が顔馴染みになっていて、 里子さんが早立ちした事情を知っているだけにみんなキョトン状態。 どうやら彼女の乗る飛行機に電子系統のトラブルがあり、出発がキャンセルになったらしい。 当の里子さんはと言えば「嬉しいトラブルやったわ・・めちゃ嬉しい」不幸中の幸いを喜んでいた。 私は一度ならず二度も舞い降りてきてくれた天使を大歓迎、他の受講生もまた、このトラブルを喜んだ。 少しの間、ざわついたが講習は、また続けられた。 ところがスティックを使ってする筈のセミナーなのに、スティックその物を怖がる犬がいた為に そんな時の対処の仕方から説明が始まった。 TVショッピング ? (Gary Magic)?? その方法とは・・ 初めは指先から少し出すくらいから始める。(この時スティックの先にエサの臭いでもつけておくと良い) もっと怖がる犬は宙に浮かさず地面にくっつけた状態から始める。 違和感さえ取れれば直ぐに出来る様になる。
|
次はオーストラリアLucilleのMUSIC この講習は音楽の選び方などの話が少しあったのだが、本題をそう詳しく話すことはなかった。 それよりもここで大きな話題になったのは、ポジティブ訓練やネガティブ訓練の事、 そして先日話題になったキューになる手や小道具の件だった。 話しは講習時間いっぱいまで熱心に討論されたが、最後にLucilleは、 「ポジティブ訓練を推進するが、ただ、それだけではいけない事もある。」とだけ付け加えた。 WCFOは絶対的なポジティブ訓練推進団体であり、そのセミナーでネガティブな考え方や、 方法を披露する事はタブー(・・だと思う)に近いと言える。 講師のこの発言はかなり勇気のいる発言だったのではなかろうかと・・ひとり思いながら聞いていた。 私は今回のセミナー出席者の多くの方々の犬達から、何かしらの違和感を感じていただけに、 その言葉の裏に含まれた大きな意味が凄く理解出来た。 BonnieのCHINING ランチタイムを挟み午後一番の講習は「BonnieのCHINING」 このセミナーは『コマーシャルのオーディションをする。』という事を想定し、 各グループに分かれ発表形式に行われた。 これはルーティンを組み立てたり愛犬にトリックを教える時、固定概念に囚われず色んな方向から 物事を組み立てていけるような力を養う授業のようだ。 練習時間は20分くらい、各グループにはテーマが違うストーリーが与えられた。 私達グループは『犬がオモチャ屋さんに行き欲しいオモチャを見つける、飼主の元へ戻り、 飼主を連れてオモチャ屋さんに行き欲しいオモチャを教えて、おねだりで吠える』という設定だった。 まずここでは、複数の中から欲しいオモチャにタッチ・飼主の元へ戻る・飼主の手にタッチ・オモチャの所に行き 欲しいオモチャにタッチせる・吠えさせる、と各パーツ別に分けそれを繋げればひとつのストーリーになる。 各グループ2・3人で編成されている為、パーツ別に分けトレーニングを開始。 この講習は幾つものムーブで構成されるルーティンはもちろんの事、ひとつのトリックを教える際にも ひとつとは考えずに分けて教えれば、もっと簡単に教える事が出来たり、色々なバリエーションが生まれたりする 要素がある事を教えてくれた。 |
|
Garyは日本に凄く興味を持っていて、 日本史の勉強をしているそうだ。 |
|
Atillaのセミナーは「DISASTERS」 次の講習はAtillaのDISASTERS。 この講習も受講するまでは内容が謎だったが、フリースタイルをする時の注意事項であったり、 本番中にミスをした場合の不測の事態に対する対処法だった。 1)ハンドラーが緊張してルーティンを忘れた場合は動揺せずにシンプルなルーティンに変える。 2)犬が間違った動きをしてもスマイル 3)人間がスリップした場合は起き上がる前に犬にスマイルそして起き上がる 4)リンク内でのウォーミングアップの際、犬が興味を示したもの(臭いや物体)は犬が納得ゆくまで調べさせる。 ・・など笑ってしまいそうな事から、興味深い事まであった。 4)の項では、理由として 「気になる臭いや物があったりして確認しているのに途中で止めさせると本番中にまた興味を示すから」と言っていた。 実際、競技前の公開練習中に、色んな方の同じような場面を幾度も目にしたが、何故ただひたすらに犬のしたいように させているのか理解が出来ずにいた私は、この話を聞き何となく理解できてきた。 ただし、あの方達はおそらく指導者達の話を良く理解できていないだけなのではないのだろうか。 気になる臭いに反応したとしても、ウォーミングアップ中や馴致中の匂いかぎ行動と 練習の最中での匂いかぎ行動では、明らかに対処が違って来ると思う。 結局このような犬達の本大会での行動は想像通りの結果で、ハンドラーを一度も意識する事無く、 ひたすらにリンク内を嗅ぎまわる犬もいた。 どのような良い意見も、鵜呑みにして取り入れると裏目に出る事もあり大変危険だ。 あくまでも状況や犬の熟練度などを考慮して取り入れるべきと再確認した。 演技中に吠える犬 演技中に吠える犬については、かなり多くの方が悩んでいると思うが、 「吠えたらリンク外に出す→自分だけが演技を続ける→犬が大人しくなったらまた呼んで一緒に演技する。」 ・・を繰り返し行い、吠えたら演技が出来ない事を罰とする方法をAtillaは教えていた。。 この方法は色々な人から聞いていたが、Atillaはこの方法を説明した後で、私達の方をチラリと見て、 「これもずっとしていたらまた吠え出すけどね」と笑って言った。 だが、成功している犬もいると言うので、もしそうなったらやってみる価値はありそうだ。 このあと吠えないようにする為の、かなり効果のあるアロマの説明をしていたが、 そのアロマはまだ日本では取り扱っていないそうだ。 |
|
|
いよいよ最後の講習 Sandraによる「DISGUISING CUES」 この講習では、フリースタイルをするにあたっての注意点などがあげられた。
今までに私達はサンドラのビデオを随分と参考にしてきたので、このセミナーの内容が そのビデオにそっくりという事に気が付いていた。 先日お話しする機会があった時にビデオを参考にしている事は伝えておいたので、 Sandraは「今言ってる事は私のビデオで全部言ってるわよ」と言いながら 私達の方をみて「ネッ、今までのことは全部言ってるわよね!」と問いかけてきた。 「は、はい!」私はとっさに返事をした。 その後の残りの時間は質問形式で行われ、Sandraから色々な話しが聞けた。 その一部です。 Q) 私はスティックを使いながら(ガイドとして)教えていますが、スティックはとる事ができますか? A) スティックは手の延長だから絶対にとる事は出来ます。 (注)彼女はスティックを、ターゲットスティックとして使用していない。 Q) ルーティンが決まったら、通しての練習(最初から終わりまで)を何度も行いますか? A) 私はします。何度も練習する事で犬に覚えさせます。 例えばペッパーは6回まわったらジャンプ、みたいに覚えてるの! Q) (上の質問に続いて・)犬がトリックを続けて覚えてしまったら次の作品の時に問題ないのでしょうか? A) 問題ないわ!私は12のMOVEしかないけど、その12個のMOVEを少し組替えているだけだから・・ 答えがふたつ・・・ ここでやり取りを聞いていた一人の女性から発言があった。 「 安心しました。他の人から"最初から最後までの練習を繰り返しするのは避けましょう"と言われたけど、 あなたの意見を聞いて本当にホッとしました。」と言った。 ところがAtillaの講習でもこの話題は出ていて、その時は「絶対に行ってはいけない行為」として教えられた為、 受講者は複雑な心境で聞いたに違いない。 でも私は二人の話の真意は充分に理解できた。 私もまだやり始めたばかりの時は、各トリックやポジショニングが確立されていない為、 トリックとトリックを続けて覚えさせる事は避ける様に所長に注意を受けていた。 だがトリックやポジショニングが安定して来たら、あえて犬に覚えさせる事を最後の調整の時行うようにしている。 でも問題が生じ迷っている時に答えが二つ出てきたら、自分に都合の良いほうの答えに しがみつきたいという「迷える人」の気持も充分に理解できる。 所長は良く言う「答えは一つではない。時には正反対の答えが存在する。」 「犬やハンドラーの性格や錬度などによっては、もっと沢山の答えやプロセスが存在する」・・と。 「他の人との違い」の部分をもっと深く聞きたかったのだが、英語が解らないので勝手な想像も交えながら聞いていた。 でも、Sandraの言う事もAtillaの言う事も、きっと正しく理解できたと思っている。
|
さらば、アシュビル!(5月16日) 朝4時にホテルを出発!!初めて現地のタクシーに乗り空港へ向かった。 日本で外国のタクシーの恐さを聞かされていた私は少しドキドキしたが無事に到着。 荷物を預けて、あとは搭乗するだけ。 搭乗案内が始まりチケットをチェックするその時!!一人の女性係官がやってきた。 彼女は誰かを探している様だ。 チケットを一人ずつチェックしている。 そして私達の所に来て確認した後に、にっこり笑って佐藤さんに言った。 「あなたのバゲージが開かないの、番号は?何番?」 またも税関で・・・ アメリカはテロ対策の為バゲージは必ず開けてチェックする、だから開く様にしておかなくてはいけない。 彼女は慌てて答えた「シックス・シックス・ナインです」。 それを聞いた係官は、お礼を言って走り去った。 「ナイン?ナイン?シックス」「9?・9?・6?」 「996って言いましたよね?」佐藤さんはそのあと独り言のように言った。 「え〜っ!シックス・シックス・ナインって言ったよ!!」私はびっくりして答えた。 「やばい、996です。どうしよう〜」彼女はもう完全にパニックっていた。 慌てて荷物の所に走った。 すると、彼女と入れ替わりに、またもや係官がやって来た。 「やっぱり開かないのよ」と言ったので「すみません。彼女のバゲージナンバーは996です」と言うと、 係官はにっこり笑いながらまた走って行った。 ところがまたもやその係官が戻ってきて言った。「左の鍵があいてないみたいなの」 片言英語で「すみません。少し待って下さい」と誤っている所へ、佐藤さんがヘトヘトになって戻ってきた。 鍵を渡し一安心した。 これで一件落着かと思いきや、またまた係官が走ってきたのだ。 「おい、佐藤〜!!ここまで来てやらかすなよ〜」 「やっぱり開かないわ、もう時間がないから壊してもいいわね?」と係官は言う。 佐藤さんはがっくりした表情で、あっさり「イエス」と答えてしまっていた。 「いいわけないやろ!!」人事ながら納得いかない私は色んな事を考えていた。 鍵で開かないなんて開けきれなかったか、鍵が違うか? 「もしかして私のバッグと佐藤さんのと入れ替わっているかも・・」 二人は色々な事を想像しながら、ふたり分の鍵を渡して、もう一度チャレンジしてくれるようにと、 チケットをチェックする男性に懇願した。 ここでもすっかり舞い上がった佐藤さんの英語にチケット係りの男性は右往左往。 やっとの事で係官の女性を呼んでもらえた。 そしてバゲージは壊される事なく開いた。 (始めから、鍵はあっていたが開け方がまずかったようだ) 搭乗したときにはもうクタクタでおまけに出発時刻を約10分位遅らせてしまった。。 ところが、帰りの飛行機では寝れずにいる私を尻目に佐藤さんは横で爆睡している。 今回の旅でそんなポジティブ娘を何度羨ましく思ったり、頼もしく思った事か・・。 ディスカバー・ジャパンの アシュビル行き・・ こうして無事にふたりの旅が終わり、沢山の土産話しをもって福岡に着いたのは もう日付の変わった5月17日の夜でした。 少なからず観光気分で行ったアシュビルは、税関で目的を聞かれた時に「観光」と言い切って不審がられ 足止めされた経験どおり、何もない所でした。 だが、それ以上に考えも及ばなかった素晴らしい経験が出来た事は大収穫でした。 自分の経験の浅さも再認識できたし、だけど日本の良い部分の多さも解ったし、 今回の旅を終えて私が手にしたものは、技術以上の物としか言い表せませんが、 迷っていた私の背中を押してくれた沢山の方の為にも、今回の経験をスクールの生徒さんや FSファンシャーの為に役立てていけたらと願っています。 この滞在記に出て来た「ある方」、またアシュビルで出会った世界のフリースタイラーの皆さん、 背中を押してくれた諸先生方に、もう一度言わせてください。 「貴重な体験を有難うございました」 そして最後まで読んで頂いた方にも・・ 「有難うございました。」 June 11, 2005 安田有紀子 |
終わるのチョッと待って!(お供編) |