WCFO International Freestyle Conference に出席して・・

(アシュビル滞在記)
   旅人:島田有紀子



 今回のコンフェレンスでのセミナーや競技会は、ビデオ撮影はもとより
写真撮影も一切禁止でしたので、文と写真が合わない事があります。あしからず・・・。

アッシュビル滞在記(V)・・♪♪

 5月13日(金) AM  Whirl Competition

  リンダ登場!・・

 休憩が終わり、午後の競技が始まった。
次はMusical Freestyleノービスクラスからだ。
この部門には先日空港に迎えに来てくれたLindaが出場する。
楽しみなのだが、何故か私までが緊張していた。
いよいよ出番だ!スレンダーな彼女は黒い衣装を身に纏い、
愛犬チャンスと登場してきた。

 音楽が流れ出す。
あまり緊張している様子もなく、むしろ楽しんでいる様に見えた。
ラテンのリズムにのって繰り広げられた二人のルーティンに
会場からは割れんばかりの拍手が送られた。
2分30秒が短く思えた。大成功だ! 
私たちも負けじと大きな拍手を送った。
彼女達ペアーのルーティンは、今までの出場ペアーのなかでも
群を抜いていた。
リンダの愛犬チャンス
 謎の男?ダニエル・・

 次の「インターメディエイトクラス」には現地で知り合った、
カナダの男性フリースタイラーDaniel Ratayが、愛犬タンゴと出場した。
彼はスターウォーズの曲で演技したのだが、ルーティンもさる事ながら、コスチュームの派手さには驚かされた。
本人が言うには映画のポスターを見てデッサンし、生地の手配や細部の加工まで本物そっくりに仕上げたのだと言う。
マスクは“マスクの下にマスクがある”という具合に、二重になっていて本物そっくり。

 本当はこのルーティンでPro Stersに出たかったらしいが、評価が低く切符を手に入れる事が出来なかったそうだ。
「私の作品の良さがアメリカ人(ジャッジ?)には解らないらしい」と後日談で嘆いていた。
彼の熱の入った話を聞いていると、“リアリズム"に対するこだわりが伝わってきたが、
同時に「そこまでしなくても・・」と心の中で反論してた。
(↑要するに口に出して言えなかっただけです)

 余談だが、彼は犬関係グッズのある分野では、ヨーロッパシェアー第二位の会社を経営している実業家で、
トレーニングスクールも所有し、WCFOの正式スポンサーにもなっているという。
随分とお世話になったので、彼の会社のホームページを紹介しておきます。
 http://www.dogstory.net/)(http://www.dogstory.net/convention2005.htm)
フランス語なのでEnglish Sectionを選ぶとCanine Freestyleを見付ける事が出来ます。
彼はTV関係の大掛かりな仕事などの話をしていたが、HPでは彼が言ってた嘘のような話の一部が動画で確認できます。

 


出番前にモチベーションをあげるダニエル・・
凝りに凝った、スターウォーズの衣装



 5月13日(金) PM Pro Stars Competition

 Pro Starsのトップバッターは・・

 さて、いよいよ私が参加する"International Pro Stars Competition "が始まる。
プログラムには一度は耳にした事のある名前や、今回のセミナー講師陣達の名前がずらりと並んでいる。

 そして興奮はいきなりやって来た。
会場内は、アナウンスが流れる前からざわついている。
トップバッターは「Atilla & Fly」だ。
ルーティンは彼を世界中に知らしめた出世作? “Hurray for Hollywood"。
あのチャールズチャップリンのルーティンだ。(知らない人は彼のHPで動画が見れます。
   www.happy-pets.co.uk/dogdance/

 普段は優しくとても謙虚なAtilla と、大人しく愛らしいフライだが、
リンク内に登場して来た彼らはまるで別人。
普段とは違う大スターとしてのオーラに包まれていた。
聞きなれた音楽が流れ出した。
何度もビデオで観ていて音楽もルーティンも覚えているが、やはり生で見る演技は迫力満点!!
ルーティンは今回のコンペティション用に?少しレベルアップされているように思えた。
観客からはトリックのひとつひとつに歓声が上がる。
演技中のAtillaとFlyの絶妙の掛け合いは、計算しつくされたハイレベルな芸術作品だ!
演技が終わっても歓声と拍手が止む事は無く、熱狂はしばらく続いた。
前日Atillaからフライのコンディションが思わしくない事を聞いていた私の心配は、全くの杞憂に終わった。
出番を終えたAtilla、ダニエル夫人と・・
会場風景
フライに会場の馴致を・・
 次にセミナー初日の講師、Peggy Ssingletalyが愛犬Porterと出場したが、
前日のセミナーのモデル犬としての仕事で疲れていたのか、少し精彩を欠く動きになってしまったのが残念だった。
セミナーで私の為にボディタッチの体験モデルをしてくれた時、杞憂していた事が現実となり、
少しばかり責任を感じる結果となった。
その後もカリフォルニアのDonelda Guy、食事会で一緒だったオーストラリアからのLucille Ellem、
南アフリカのトップスターGaby Grohovasなど素晴らしいペアーのルーティンが登場した。
言うまでもないが、やはりPro Starsのレベルは高い。
犬の動きも人間の動きもすべて素晴らしい。
トリックはもちろんだが、基本的なヒールポジションは、どのペアーもしっかりしている。


  ついに出番が・・

 次々に演技が終わり、とうとう私の番がやって来た。
アナウンサーに紹介され観客に向かって挨拶。
遠来の客?という事だろう、より大きな拍手が送られている。
かなり緊張していたが、拍手が心地よく感じられた。
皆の目に私の演技はどの様に映るのだろうか?楽しんでくれるだろうか?
色々な事が頭の中を駆け巡る。
スクールで耳にタコが出来るくらい聞いた音楽が今アメリカで流れる。
「安田&ジップ」の演技が始まった。
演技中もあちこちから拍手が起きる。
しかも受けるとは思っていなかった予想外のトリックに歓声が上がる。
解釈の違いの大きさに驚かされた。
遠来の客という事も手伝ってだろう、演技終了後は歓声付きで一段と大きくなった。

 そして夢のような出来事が・・

 「あ〜、良かった」
少しホッとしていると、思わぬ大事件がおきた。
あの憧れのSandra Davisが、わざわざ私の所まで来て声を掛けてくれた。
しかも「とても、素晴らしかったよ・・」と言いながら、私の手をギュッと握りしめて、
身に余る程のお誉めの言葉を沢山頂いた。(殆どは理解出来なかったが・・)
こちらに来て何度かお話をさせて頂く機会はあったものの、沢山の大物?の中にいても
ひと際輝きを放つ彼女には、憧れを通り越して"怖さ?"を感じていただけに、喜びも倍増!!
感激で天にも上る気分だった。   「今日は手を洗わんめぇ〜」

 コンペティションもいよいよ終幕!
今日のすべてのイベントの最後を飾るのは、やはり「Atilla & フライ」だ。
ルーティンは大作"グラディエーター"。今回二度目の演技になる。
中世ローマの剣闘士の衣裳を身に纏い颯爽と登場して来た。
会場のボルテージは上がるいっぽう。
演技は始まった。迫力ある演技が続く、間の無い演技に息をするのを忘れてしまう程だ。
細かいトリックも沢山あり、ひとつ間違えれば大きな失敗になってしまう。
観客はかなりの歓声をあげているが、フライはそんな事お構いなし、Atillaにだけ集中している。凄い!!
今この会場は彼らの為だけのステージになっている。
演技終了後も鳴り止まぬ歓声。 彼らが退場してもしばらくの間歓声は続く。
まるで、カーテンコールを望むかのように、私達もずっと歓声を上げ続けていた。
絶頂にまで上がった興奮が冷めるのにしばらくの時間が必要だった。
・・こうして興奮のCompetitionが終わった。

  ダニエル夫妻と寿司バーへ

 今夜はカナダのトップ?フリースタイラー・ダニエル夫妻と食事をする事になっている。
日本食が食べたいと言う事で寿司バーへ。
こんなアメリカの田舎にまで日本文化が浸透?している。
ところが絨毯の部屋に案内され、靴のまま上がり座布団に座る。
かなりの抵抗があったがここはアメリカ・・“郷に入れば何とやら"だ。
それよりも嬉しかったのは、BGMに美空ひばりの歌が流れていた事だ。
英語ばかり耳にしていた私にとって、目の前にお味噌汁を出されたように嬉しかった。
つい口ずさんでしまう。
アメリカに来て一番の御馳走は演歌でした。

 ダニエルについては(パートU)で先述しているので、奥様はとても奥ゆかしくて綺麗な方だ
ということだけ伝えておきます。

「1万何千人もの観客の前で踊った事がある・・」
「スターウォ−ズのメイクをして衣装を着るのに何時間もかかる」
「自分の事業が業界で占めるシェアーは世界第二位だ・・」など等、
私たちには桁違いの話しにも、奥様はいちいちうなずきながら頼もしそうな目つきで笑みを返す。

絨毯に靴、アメリカ風お座敷で・・
仲の良いダニエル夫妻

 この日の夜、今日の競技会の模様が早速TVで放映されると聞いたので、
里子さんを交え雑談をしながらその時を待った。
10時30分頃放送が始まった。
「アティラだ!」「ダニエルだ!!」「タンゴだ!!」「チャンスだ!」
「えっ、もう終わり??」
待ったわりにはあっという間に終わってしまった。
その夜もまた、私達三人は訓練に付いてなどの話で夜更かしをしてしまう事になる。

 5月14日   セミナー2日目

  舞踏術?

 今日のワークショップは、参加者が4グループに分かれ、5つのセミナーすべてを
1日のローテーションでまわり受講するという形式で行われた。
私達はオーストラリアのトレーナー・Lucilleの"Choreograpy"というセミナーからのスタートだ。
直訳すると舞踊術だが、ここではリンクの使い方、様々なステップの取り入れ方、構成時の考え方などを受講する。
Lucilleは曲を聞かせ、いきなり一人ずつ踊るように言った。
さすが陽気なアメリカ人尻込みする私達と違い、ノリノリで踊る人の方が圧倒的に多い。それも堂々と説明付き。
私の番がまわってきた!!
これはリンクの使い方ではなく、曲のテンポにどういったステップを取り入れるか?を見ているのだろうと
解釈した私は、取りあえず自分なりの表現をしてみた。
「合格!!」Lucilleはにっこり笑いながら言った。
「えっ!それだけ??」「何か・・アドバイスを・・」
あまりのあっけなさに拍子抜け・・。

 次はリンクの使い方についての講義だ。
まずLucilleは「リンクをどう使うか書いてみて・・」と問題を出す。
少しの時間が与えられそれぞれがノートに書き出した。
私はいつも気を付けている事を取り入れ、普段通りに書いて提出。
これもまた「問題いないわ!」と言われ難なくパス。
リンクの使い方はルーティン作りの際、最も気をつける事のひとつだが、
リンク使いの良し悪しは作品の完成度にかなり影響する。
ここでのセミナーはいつも気を付けている事の大事さを再認識した講習だった。
それにしても、あっけない合格のコメント。
英語が出来ないからと思い、無理なアドバイスを避けたのかな・・と思うと、
少しだけ損をしたような気分になった。

(Lucilleはヘビースモーカーでいつの間にか姿が見えなくなる。   
 ダニエルと一緒のこの写真一枚だけ・・) → 
  クリッカトレーニングの神様登場!

 二つ目のセミナーはGary Wilkeのクリッカートレーニングのセミナー・・。
彼はクリッカートレーニングの第一人者として全米、いや世界中のクリッカートレーナーに知られているらしい。
「私も十数年前に彼から教わったんだ。彼はクリッカー以外でも、トレーナーの中では神様のような人なんだ。」と、
あのAtillaも私達に絶賛していた。
これは聞き漏らしてはいけないと思ったが、私にとってクリッカートレーニングは
まだまだ勉強不足で未知の世界に等しい。
それに言葉の壁。
言ってる事は何となく解るのだが、核心的な事を突っ込めない。
一見簡単に見えるクリッカートレーニングだが、間違っ解釈で全面的に取り入れる事は避けたいと思う反面、
部分的に利用する事には、かなりの意義がある事を感じた。
トレーニング方法では代表的なものだが、とにかくもう少し勉強してから・・・。

 「やれやれ・・」まだ2セクションが終わったばかりと言うのに、
イングリッシュシャワーで私の頭はクラッシュ寸前だ!!
この件は帰ってから所長に日本語でゆっくり聞く事にしよう。

 ランチタイムをはさみ午後の部が始まる。

  かわいそうな Atilla・・

 AtillaとFlyのセミナーはかなり期待していたのだが、講義中心の為、かなり退屈なものとなった。
殆どはトレーニング以前の気分上げのやり方などが中心の、モチベーションの講習だった。
日頃から大事にしている事のひとつなので、凄く興味はあったのですが、
ここまで読んでいただいた方ならわかるでしょ?私の語学力・・。

 Atillaはちょっとでも良かったら大袈裟に誉める、ハンドラーの方が疲れる位を強調していた。
ビデオやセミナーを通じて見る彼のトレーニング風景は、いつもひょうひょうとしていると言うのが、
私の印象だったので、この事が意外に聞こえた。
しかしこれは、私のスクールではいつも言っている事だ。
初心者だけでなく、どのレベルにあっても、この事は忘れてはいけないと、よく言っている。
Atillaもその事を大事にしている事が分かり妙に嬉しかった。
ところが、このグループの殆どの犬はなかなか思うようにいかない。
日頃あまりにも誉められ慣れているのか、反応が鈍い。
誉めると「いまさら何よ!・・じゃぁ〜もういいのね・・」と言ったような顔をして遊びだす子もいる。
これにはAtillaも少しばかりてこずっている様子で、時折私達のほうに目を向け、やり辛そうな顔をしていた。
「これじゃー次に進めないよ。こんな事、基本中の基本だろう・・」

 彼がそう言っている様に見えた。

さて次はいよいよSandraによる、K-9DRESSAGEだ。

いつも紳士で親切な、Drアティラと・・
トレーニング中のDrアティラ


アッシュビル滞在記・W